灰色ついて
前日に降った雨で埃を払い落とした空気は、いつもより少し滑らかに感じる。少し潤いを含んだ優しい冷たさがビルの間から吹き込み、僕の髪やカーディガンが揺らす。後ろに回り込んだ風が満員電車で汗ばんだ背中をさする。
通勤の人の流れを抜け出し僕は階段を登る、地下に入っても同じ所得たどり着けるのだけど、人の少ないところを選ぶ。階段を登ると外に繋がっていて、空を見ることが出来る。こっちの道を選ぶのは空を眺めたいからかも知れない。
今日の空はいつもより低かった。曇りだ。たくさんの水を抱え込んでいるであろう雲は、今にも雨を降らせそうで、僕の頭上の日本一高いビルにくっつきそうである。
黒から白までいろんな濃淡で重ね塗りされた灰色の雲は、ぶつかったり溶け合ったり重なり合ったりして、海を逆さにしたように波打っていた。
この灰色の海のどこかに、太陽が沈んでいる。海に沈む財宝を想像して、僕は宝探しをする。
ふと階段の上から下を見ると、下には人の海が流れている。あの人達は何色だろうか。僕は何色だろうか。