じっと手を見る

毎日に気づきと発見を 日記っぽいエッセイ

石田衣良「4TEEN」について

4TEEN (新潮文庫)

 石田衣良さんの作品はあまりいい思い出がなかった。中学生の時に「池袋ウエストゲートパーク」を読んだとき、アダルトな雰囲気にやられて、すごく読みづらい印象があった。今でもその印象だけが残っていて、なかなか手に取ろうとは思えない作家だった。

 

 今僕の中では第二次読書ブームが来ている。その折に友達にこの小説を勧めてもらった。実はそんなに気は進まなかったが、ええい、ままよ!っと読んでみた。

 

 読み始めは特に何も感じなかった。普通に面白いなあ、でもやっぱり小説だなこんなことって普通ないよ。と思って読んでいたのだけど、読み進めるうちに不思議としみて来る。そう、ボディブローのようにきてくるのだ。まあ、ボディブローを受けたことはないのだけれど…

 

 主人公達は、14歳の4人組。小柄でメガネで頭の切れる秀才、ジュン。180センチの巨漢、大飯食らいのダイ。ウェルナー症候群という、人の何倍早くも歳を取ってしまう病気をもつ少年、ナオト。そして、ごく普通の14歳テツロー。物語はこのテツローの目線で語られている。

 

 特徴的なキャラクターの多い中、目線を普通の中学生に置いているのが良かった。普通の目線だからこそ、物語が僕たち読者の日常から浮いてこない。実際僕は小説の中とは全く違う、大人しいタイプの中学生だった。でも読んでいるうちに清々しい懐かしさが自然と湧き出してきて、14歳の頃の自分を見ているような気持ちになった。

 

 彼らは中学二年の一年間の中で、様々な事件を通し様々な体験をして少しずつ成長して行く。直人の病気の事、同級生の女の子の事、ジュンの恋の事、ダイの家族の事。生と死。愛や性。14歳の目で見る世界は今よりちょっぴり刺激的で、ちょっぴり寂しい。それでも彼らは底抜けに明るく、勇気があってかっこいい。無謀と呼ぶのかもしれないけど…。人生を意識してかしないでかは分からないが、人生を味わいたい、もっと味わいたいと生きるがむしゃらな彼らを、僕は大好きになっていた。

 

 そして彼らは気づく。たとえ未来がどうであれ、14歳の僕たちの今は最高だ。これか先どんなことがあってもそれだけは変わりはしないんだと。