じっと手を見る

毎日に気づきと発見を 日記っぽいエッセイ

夜の赤信号について

f:id:bandsgr51try:20170528194013j:image

 

 深夜。0時30分。

 

 毎朝職場に向かう坂道を、今は自転車を押しながらだらだらとくだる。自転車に僕の体が引きずられてるのかもしれない。キリキリなる自転車のタイヤの音がこの住宅街で僕の耳に届く。

 

 「赤だ」

 

 信号を見て思った。いつもより赤い。気がした。

 

 朝の光でしか見ることのない信号を、暗い中でまじまじと見るのは不思議な感じ。

 

 きっと「見えているもの」と、「見ているもの」は違う。

 

 いつもより赤い信号。いつもより明るい街灯。街の灯りに消え入りそうな星。遠くに見える家々の灯り。

 

 僕は今、「見ている」。見えているだけじゃ分からないことってすごく多いんだ。

 

 キリキリなる自転車。川向こうから聞こえるバイクのエンジン音。後ろからやってるトラック。

 

 「聴いて」みた。

 

 気づいてしまえば簡単だ。日常の中に埋もれている音を、草をかき分けるように聴き探す。

 

 見えるもの、聴こえるものを探しながら帰った。

 

 世界はいつもより賑やかで、でも騒がしかった。僕は疲れているんだ、静かにしようか。

 

 静寂を「聴いて」みようかしら。

 

 息を吸う、上を向く。

 

 僕は空に浮かぶ大きな静寂を見た。