じっと手を見る

毎日に気づきと発見を 日記っぽいエッセイ

引っ越しについて

 何もない部屋は驚くほど声が響く、分かっていたことだけれど体感すると寂しさはひとしお。

 

 引っ越しをした。便利なところに引っ越した。もちろん自分の意思で決めたのにこんなに寂しいなんて思わなかった。

 

 なんたって四年も住んだ家だ、朝日の眩しい東向きの窓も、広くて使いやすいキッチンも、木製のクローゼットも、もう無くなるんだ。

 

 後悔とかじゃないよ。引っ越すまでこの先のこと考えてワクワクしてたから、ここにあった思い出に気づかなかっただけ。

 

 大学生だった四年間いろんな思い出がある。けど、帰ってきてたのはやっぱりこの家。いつも当たり前に帰る場所があったからこその思い出達。何もなくなった部屋を見て初めて気づいた。

 

 家を持っていきたい、そのくらいこの家が好きだ。

 

  でもやっぱり行かなきゃね。

 

 何もなくなった部屋で、最後の日常生活をしてみた。もちろん何にもないから日常生活妄想だけど。

 

 寝て起きて着替えて、作って食べてお皿を洗って。そして好きな歌を歌う、この家で好きになった歌。何にもないからいつもより響いた。

 

 この響きがこの家の声なのかもしれない。

 

 僕はやっぱりこの家が好きだった。

 

 「お世話になりました。ありがとう。」

 

 さあ、出かける時間だ。

 

 「それじゃあ、行ってきます。」

 

 いつものように言えた。

 

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